大した理由なんてない。

 興味本位、最初はそれだけだった。あの男の事を好きになる馬鹿な女の事を、どうせ報われないだろうに、それでも偽善を抱き想い続ける愚かな恋の終わりを、抉ってみたかった。恋なんて馬鹿げた事で胸を騒がせる女と、それに気付きもしないで女の事を、全く女が望まないかたちで大切にし続ける化け物を、見ていたかった。

 最初は、それだけだったのだ。

 いくらでもからかう材料はあった。最初はいちいち過剰に反応していたも、繰り返されるうちに少しずつ大人になり、今では動揺を隠して痛くも痒くもないと笑ってみせたりする。愚かで滑稽で、ひどく愛おしい馬鹿な。そうやって終わりのない沼に突き落とすたびに、は死んでしまえと言わんばかりの強さでこちらを見る。
 睨みつけるのその強い光を見るたび、臨也は思う。これほどの強さで想われるのが、あの男でなければ。
 ――自分であれば。

 深い意味はない。ただその時自分はどうなるのか、どうするのかを知りたいだけだ。これほど手に入れたいと思い執着するのは、が今は自分のものではないからだと臨也は分析している。いつか遠くない日にが自分のものになってしまったら、その時、自分はきっといつもみたいに興味を失うのだろう。でも、それは、訪れなければ解らない未来のはなし。


 解るだろう? 俺は今すぐにでも知りたいんだ。
 だから、さあ、早くここまで落ちておいで。





預 言 者 の 渇 望
涙も絶望も、全てを見たいだけ